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飯田医師の痔瘻に関する論文が、権威ある国際雑誌「Updates in Surgery」に、2025年3月27日付でオンライン掲載されました
痔瘻とは肛門の中にあな(原発孔)があり、外にもあな(2次孔)があり、この間がくだでつながっている病気です。症状としては、肛門のはれ、いたみ、ウミが出る、肛門にしこりがふれる、などがあります。このくだは、肛門をしめる筋肉(肛門括約筋)の中を走っています。痔瘻は放置しておいても治りません。また薬を使っても治りません。手術をしなければ治りません。また、あまり長く放置すると痔瘻癌になる場合があります(頻度100人〜1000人に1人)。
痔瘻の手術は肛門の手術の中で最もやっかいな手術と考えられています。なぜなら手術をしても治らないことが多く、再発も多く、おまけに手術を受けた後、肛門のしまりが悪くなるとことが多いからです。
世界における痔瘻に対する標準的な手術方法は、切開開放術です。切開開放術は、痔瘻に沿ってメスを入れ、痔瘻のくだを肛門をしめる筋肉とともに切開し開放する手術です。
この方法は、手術のあとのなおりは良い(治癒率は高い)のですが、肛門のしまりがよわくなる、ひどい場合は垂れ流しになってしまうことが大きな問題です。
痔瘻に対する、もう一つの術式として、瘻管切除術(くりぬき術)があります。この方法は、肛門をしめる筋肉は切らずに、くだだけをくりぬいてくる方法です。この方法の長所は、肛門をしめる筋肉を切らないため、しまりがあまり悪くならないことです。しかし、短所は手術のあと、痔瘻が治らなかったり(治癒率が低い)再発したりすることが多いことです。
飯田医師はこの両手術の良いとこ取りをした手術方法を考案しました。切開開放術とくりぬき術の良いとこ取りをした手術なので、開放くりぬき術と名付けてよいのかもしれません。すなわち、肛門をしめる筋肉はさわらずに痔瘻のくだだけを全て切除し、切除後できたすきまを閉じ、キズはぬわずに開放とする方法(肛門括約筋温存・皮膚肛門上皮切除下・瘻管全摘・括約筋間腔閉鎖術(TFRAS、開放くりぬき術))です。
この術式を行った618人の患者様を検討したところ、治癒率は98%と極めて高く、再発も0.7%と極めて少なく、また術後便のもれをきたした人は0.7%と極めて少なく、また固形便のもれや重症の漏れをきたした人は1人もいなかったという極めて良好な手術成績であることがわかりました。
この成果を、今回「Updates in Surgery」に投稿したところ掲載されました。
痔瘻はそのくだの走り方によりいくつかの型に分類されます。その型どうしを色々な項目につき比較したのが下の表です。治癒率に関しては挙筋上型という、くだが奥の方まで続いている痔瘻が、中ではもっとも治りが悪いという結果でした。また、再発率に関しては分類不能型という痔瘻の入口や走り方がよくわからない痔瘻が再発しやすいという結果でした。
世界における痔瘻に対するいろいろな術式を比較したのが下の表です。
上の表にお示ししましたように、開放くりぬき術は世界における他の術式と比較しても、治癒率が高く、再発が少なく、便失禁率も低く優れた術式と考えられます。
この手術術式に関しては、これまで世界で誰も報告しておらず、しかも、手術成績が非常に優れているという事が評価され、掲載されたものと考えられます。